イギリスでも花見！？ナショナル・トラストの植栽プロジェクトとは？

イギリスのナショナル・トラストは、桜などの花を咲かせる木々を多く植え、人々が自然を体験できる美しい空間を作る計画を立てています。これは、日本の「花見」の概念をイギリスでも実現しようというもので、注目を集めています。

ナショナル・トラストとは、イギリスを拠点としたヨーロッパ最大の自然保護団体であり、会員の寄付金、ボランティア、スタッフの支えにより、自然や歴史的建造物、景勝地を国民のために保持する慈善団体および会員組織です。

今回は、このナショナル・トラストの植栽プロジェクトに焦点を当ててご紹介します。

地域社会の発展に貢献する植栽プロジェクト

この植栽プロジェクトでは、ナショナル・トラストがパートナーと協力し、緑地や桜などの木々を通して、地域の人々がより自然に触れられる空間を作ることを目指しています。

自然を楽しめる場所は、人々に希望を与え、自然を見つめ直す場となります。パンデミックからの前進と、春の美しさを楽しむ場となることを願い、この植栽プロジェクトはスタートしました。また、BBCニュース記事によると、日本の「花見」の概念をイギリスでも実現したいという意向もあるようです。

日本のお花見はここ数年、イギリスのメディアなどを通して徐々に認知度が上がっています。イギリス在住の筆者としても、こちらでお花見が浸透し、日本の素晴らしい伝統が広がっていくことに喜びを感じています。

今後、イングランド、ウェールズ、北アイルランドの各都市でも、桜やサンザシ、プラムなどの花の咲く木々を植えていく計画を立てています。さらに、植樹された木々は、気候変動問題への取り組みの一環として、今後10年間で2,000万本の木を植えるというナショナル・トラストの約束を果たすことにもつながるとされています。

都市に花を咲かせる

植栽プロジェクトの第一弾となる、ブロッサム・ガーデンが2021年5月24日にロンドンのクイーン・エリザベス・オリンピック・パークにオープンしました。桜やプラム、サンザシ、クラブアップルなどの樹木がロンドン行政区数と同数となる33本、サークル状に植えられました。

このガーデンの設計には地元のコミュニティが参加し、Covid-19が首都に与えた影響を振り返るための「記念の空間」としてもデザインされています。

ロンドン市長は、「この新しいパブリック・ガーデンは、パンデミックで命を落としたすべての人々を追悼する、永続的で生きた記念碑となります。また、ロンドン市民が、この世界的なパンデミックが私たちの都市と世界にもたらした意味を考え、思いを馳せることができる場所になります。」と説明しています。

現在、ノッティンガム、ニューカッスル、プリマスなどの中都市でも花をイメージした空間が作られる予定がされており、その後、その他の場所でも実施されていくようです。このプロジェクトは、町や都市に住む人々が自然に触れる機会を増やすことを目的としています。

自然を体験することが精神的・肉体的な健康に与えるポジティブな影響

イギリス最初のロックダウンの後に行われた数多くの研究によると、自然に囲まれていることは、人々の精神的・肉体的な健康に極めて重要であるとしています。一例を挙げると、ワシントン大学の助教授であるGregory N. Bratman氏らの研究では、自然を体験することが精神的な健康状態にポジティブな影響を与えることが実証されています。

自然と触れ合うことで、私たちは幸せを感じ、活力を得て、人生の意味や目的意識を高めることができ、さらに仕事をより円滑に進めやすくします。米国スタンフォード大学のGretchen C Daily博士は、この実証をもとに、世界銀行や世界各国の都市政府が自然環境を都市の景観に組み込むための政策を提案しています。

実際、ガーデニングや農業などの自然を利用した活動は、何世紀にもわたって世界中でメンタルヘルス治療の一環として行われてきた実績もあるのです。