「電気の地産地消でサステナブルな経営を実現します。」
この言葉を聞いたら、皆さんは何を感じますか?

「地産地消でサステナブル!まさにエコフレンドリーな考え方だ。」
「今は電気も地産地消の時代だよね。」

上記のように感心するでしょうか。

だけど、私はその言葉を聞いたときに「あれ?」と思いました。
ここからは、「よくわからないけど環境に良さそう」な言葉に関して勉強した私の解釈と、そのような言葉を理解して考えたことについてお話したいと思います。

冒頭で述べた文言に私が出会ったのは、持続可能なキャンプ場運営に関して上司と方法を模索していたときです。場内で使用する電気の全てを再生可能エネルギーに乗り換えることで、大きな負担なく環境に優しい運営に近づけることができるのではないかと考えました。善は急げということで、早速私達は再生可能エネルギーを扱う会社とミーティングを行うことにしました。

「なんか環境に良さそう」な言葉との出会い

「再生可能エネルギーというサステナブルな選択を。」この考え方には特に疑問は持ちませんでした。日本の発電量の76.3%を担う火力発電(総合エネルギー統計より)は、ものを燃やす以上地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出は避けられませんし、燃料となる石油や天然ガスには限りがあります。(関西電力教えて!かんでより)

今回ミーティングさせていただいた担当の方にも、再生可能エネルギーに乗り換えるメリットとして、

  • 二酸化炭素排出量ゼロ
  • コスト削減
  • 地産地消のエネルギー利用

があると教えていただきました。二酸化炭素排出量の削減やコストの削減が魅力的なのはもちろんですが、私はその中の「地産地消のエネルギー」という部分が気になりました。

「地産地消」が地球に優しいのはなぜだっけ?

そもそも私が初めて「地産地消」という言葉を知ったのは小学校の給食の時間です。食育の一環で、[地元で取れた野菜を地元で食べる。そうすると輸送する時間が少ないからトラック等から排出される二酸化炭素は少なくて済むし、なにより新鮮でおいしい野菜が食べられるよね。]と書かれたお便りを読んで幼いながら深く納得したのでした。
 そんな思い出があったからこそ引っかかったのかもしれません。トラックで運ばない、新鮮だからといって特に嬉しいわけでもない、電気が地産地消だと嬉しいことって一体何?

ストレートに「電気の地産地消」のメリットを調べてみる

ない知識を振り絞っても時間の無駄なのでストレートに「電気 地産地消 メリット」で調べてみました。そこで挙げられていたのは

  • 送電ロスの削減
  • 地域の雇用や経済の活性化

でした。確かに、地元to地元で電気を送る距離が短ければ送電の過程で熱などとして放出されるエネルギーのロスは減ります。小規模な発電所を地域に作れば地元企業が電気の小売を請け負うこととなり、地域での雇用の発生や経済の活性化が期待できるのも納得です。(話題のご当地電力。電気の地産地消とは?

いいことばかり!と思いきや再生可能エネルギーにもデメリットがありました。それは

  • インバランス制御の難しさ

です。簡単に言うと需要と供給のバランスでしょうか。電力は、夏は冷房の利用によって昼頃の需要が大きかったり、冬は冷え込む夕方以降の暖房による消費が激しかったりと、波があります。(WAM NET 知っておくべき電力・電力量の違いとは
再生可能エネルギーの場合、雨が降れば太陽光での発電量は減り、風が弱い日は風力による発電量が安定しなくなるなどの波があることは想像するに難くありません。
この2つの波を同時に乗りこなすことがなかなか容易ではないのです。

そこで調べを続けると、マイクログリッドという仕組みがあることを知りました。

マイクログリッドとは、再生可能エネルギーを含む複数の発電・蓄電設備をネットワーク化し、必要に応じて電力を供給し合うことで需給バランスの調整、電力供給の安定化をはかる仕組みです。(話題のご当地電力。電気の地産地消とは?

このような仕組みの構築によって、再生可能エネルギーを選ぶ、ということが自然な選択肢になる日も近いかもしれません。

関連記事:映画「地球の限界:”私たちの地球”の科学」から教わった地球のためにすべきこと

新しい考え方を知る

「電気の地産地消」について考える中で、「地域循環共生圏」という今まで知らなかった考え方にも出会いました。

「地域循環共生圏」とは、地域資源を最大限活用しながら自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完し支え合うことにより、地域の活力が最大限に発揮されることを目指す考え方です。(環境省 地域循環共生圏より)

つまり、各地域が自立する。その地域の特性に合わせて得意分野は伸ばし、苦手分野や有事の際は他の地域と助け合う。それらが集まることで、倒れる地域ができない持続可能な社会が実現できる、というものです。これができると、SDGsの目標に含まれる地域格差の是正や住み続けられるまちづくりなどの実現に繋がります。

こう考えると、電気の地産地消は「地域循環共生圏」の構築に向け、重要な取っ掛かりとなる動きなのではないでしょうか。

先日の宮城県沖を震源とした地震の影響により、関東圏の電力が逼迫したことは記憶に新しいですが、もし多様な発電所が地域に点在していたら?いくつかの発電所が停止してしまったとしても、他の発電所でカバーできるかもしれません。

このような動きが自立・分散型の社会の形成へ繋がり、結果的に災害が多く、地方では特定の産業に頼りがちな日本の社会において、みんなで補い合いながら持続可能な発展を目指す「誰も取り残さない社会」づくりへの大きな一歩になるはずだと感じました。

関連記事:電気を使用できない国が抱えている問題|SDGsから広がるグローバルな視点

終わりに

ここまで調べてみて感じたことは、「なんとなくの理解は危ない」ということです。小さな疑問だったものが、調べ始めたら思ったよりも複雑で様々な面から考えるべきトピックであったことに気が付きました。今回は調べた結果深いところまで知ることができましたが、場合によっては「なんか良さそう」な言葉の裏に実態がなかった、ということもありえるのです。

 SDGsを取り巻く社会の状況についての理解を深めなければ、と気持ちが引き締まりました。

「なんか良いらしい」を、「なぜ良いのだろう」に持っていくことで、気がつけることがきっとあります。
皆さんもぜひ、「知ってるよ〜」で流さずに、お手持ちのスマートフォンで調べてみてください。
クリックひとつで、自分にもできることが見つかるかもしれませんよ。

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