アメリカのアウトドアブランドとして有名な「Patagonia」は、環境保全に対する強い想いを経営理念に掲げており、私たちの故郷である地球を救うために立ち向かうことを宣言しています。そんなPatagoniaのYouTubeチャンネル「PatagoniaJP」には、環境問題についてなど、興味深い動画が数多く投稿されているのをご存じですか。

今回はその中から「The Ocean Solution|海の解決策」のレビューをお届けします。ひとりの漁師から始まった「海の中の農業」。さまざまな人々を巻き込んで進んでいく彼らの活動を通して、地球の約71%を占める海の可能性を一緒に考えてみましょう。

海の中の農業

海の中の農業とは、海藻や貝類を育てる「養殖」を指します。

「The Ocean Solution|海の解決策」の動画では、養殖が環境に与える負荷が少ないことや、環境再生が効率的に行える理由ついて紹介しています。

昆布や貝の養殖は食物生産としてより効率的

アメリカでは広大な土地を活用して、とうもろこしや大豆、麦などがたくさん作られています。そして、これらの農産物を育てるためには大量の肥料が使われます。そうして作られた作物でも、出荷される多くは牛や豚、鶏の餌に回され、私たちの食卓に届くものはわずかな量になります。

また、畜産業を見てみると、牛肉は1kgにつき28kgの二酸化炭素を排出します。これは家畜が餌を消化する際に発生するげっぷやおならに含まれるメタンガスによるものです。

一方、牡蠣やムール貝、アサリなどの養殖は、食物生産の観点でみると効率的です。ムール貝の二酸化炭素排出量は1kgにつき0.6kgだと推測されています。また海には、陸の植物の5倍もの炭素を吸収する昆布もあるそうです。

さらに牡蠣は海水から窒素を吸収し、1日におよそ100Lの水をろ過すると言われます。

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海に存在するデッドゾーンとは

窒素が多く発生している海域を「デッドゾーン」と呼びます。デッドゾーンは陸から過剰な量の肥料が海に流れ出ることで、藻類が激増することによって生まれます。

藻類が死んで分解される際には酸素が使われるため、デッドゾーンに生息する海洋生物は窒息するリスクが高くなります。

このような海域で昆布や牡蠣を養殖すれば、海中の窒素を吸収し、水をろ過できるようになります。海の農業は、デッドゾーンをなくせる可能性も秘めているのです。

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海の中の農業に期待できる3つのこと

動画の中では、海の中の農業には次の3つのことが期待できると伝えています。

1.海中の炭素や窒素などを減少する
2.最小限の投資額と技術があれば、誰もが養殖ビジネスに挑戦できる
3.海と陸をつないだ環境再生型養殖

海藻や貝類は家畜のように、作物を育て、餌として与える必要がありません。また、小さな区画でも始められ、多くの投資額も必要としないため、より多くの人が始めやすい「農業」として期待されています。

また、海の環境が整えば、陸へ栄養素を還元することもできるのです。家畜の餌に2%の海藻を加えれば、家畜から発生するメタンガス排出量が58%削減されるそうです。

海を活用することで陸地の問題解決にもつながるならば、まさに効率的と言えるでしょう。

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まとめ

「環境問題」について考える際には、海の中の生物が持つ可能性にも目を向けてみましょう。

「The Ocean Solution|海の解決策」の動画では、海の環境を整え生物の生息地を守ること、それによって陸が受ける恩恵についても説明しています。

環境問題は未だ多くの謎が残っており、人類が抱える課題や問題も多くあります。そんな中で、科学者や研究者だけでなく、ひとりの漁師が問題に向き合い解決策を探る姿は、私たちも問題に向き合うきっかけを与えてくれるのではないでしょうか。

【参考】
The Ocean Solution | 海の解決策

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