その言葉に、一瞬だけ詰まりました。
鳥野目河川公園オートキャンプ場の池や水路には、ウチダザリガニが生息しています。体長10センチを超えることもあり、大きなハサミをも持つこのザリガニは、子どもたちに大人気の生き物です。網を手にした子どもが、誇らしげに見せてくる一匹。その隣で、大人がふと口にしました。
「ここで食べちゃえばいいでしょ」
私は答えました。「公園のルールで、生き物を採ることはできないんです」と。
間違ってはいません。那須塩原市の公園利用ルールには、動植物を採ったり傷つけたりすることは禁止されています。その一言で、その場は収まりました。
でも、帰り道に考えていました。あの答えで、本当に十分だったのか、と。
ウチダザリガニは、もともと食用として日本に持ち込まれた外来種です。大きくてかっこいい、捕まえられたら嬉しい。そういう生き物です。でも同時に、在来の生き物の住処や食べ物を奪い、生態系に影響を与えるとして、今は特定外来生物に指定されています。本来この場所にいるはずのなかった生き物が、今や駆除の対象にもなっている。子どもたちが夢中になる一匹が、そういう存在でもあるのです。
特定外来生物に指定されているため、生きたまま運んだり、飼ったり、野外に放したりすることは法律で禁止されています。ただし、その場で殺して食べること自体を禁じているわけではありません。
つまり「なぜダメなのか」は、法律だけでは説明しきれない。
理由はこの場所にあります。
鳥野目では、年に数回、那須塩原市による生態調査と駆除が実施されています。どの範囲に、どれだけの個体が生息しているのかを確認しながら、計画的に数を減らしていく取り組みです。目の前の一匹も、その流れの中にいる存在です。だから、利用者が自己判断で持ち帰ったり、その場で食べたり、勝手に処分したりすることは、この場所の管理上、認めることができません。


「公園のルールで」という一言は正しかった。でも、その裏にはこの場所ならではの理由がありました。
かっこいいと思う気持ちも、食べてみたいという気持ちも、わかります。でも目の前の一匹は、この場所の環境を知るための大切な存在でもあります。
もし鳥野目でザリガニを見かけたら、その一匹がこの場所の記録の一部だということを、少しだけ思い出してもらえたら嬉しいです。

那須育ち。自然環境保全を専門学校で学び、卒業後は自然と関わりながら働く日々を送りました。今も生き物を見つけると仕事の手が止まってしまうほどの生き物好き。ゲジゲジだけは例外。子どもの頃に那須で過ごした原体験が、今の自分の土台になっていると感じています。だからこそ、この地の自然について正しい知識を伝えていきたい!まずはこの生き物はね、この植物はね、と話しかけるところから始めようと思っています。