世界で最も過酷と言われるヨットレース「ヴァンデ・グローブ(Vendée Globe)」をご存知でしょうか。無寄港・無補給、しかも単独で臨む約100日間に及ぶレース。この壮大な冒険の魅力と、2020年のレースにおいてアジア人で初めて完走を遂げたプロセーラー白石康次郎さんをご紹介します。

ヴァンデ・グローブとは

1989年に初めて開催され、4年に一度開催されるヴァンデ・グローブ。

フランス・ヴァンデ県からスタートし、大西洋へ飛び出して南下、南アフリカ共和国の喜望峰、インド洋に浮かぶハード島、オーストラリア西南のルーイン岬、南アメリカ最南端のホーン岬という4つのチェックポイントを通って、再びスタート地点に戻るという世界一周コースです。

コース途中には様々な難所があり、ヨットを動かす原動力の風がなくなってしまう無風地帯があるかと思えば、強風と6~7mの巨大な大波が暴れている「吠える40度」と呼ばれる海域もあり、ヨットを知り抜いたプロセーラーですら完走は困難。

また、赤道を越える時には酷暑に耐え、南極に向かう時には酷寒に耐えなければならないという、ヨットの技術だけでは立ち向かえないまさに過酷なレースです。

レースの様子は24時間ヴァンデ・グローブ公式サイトで知ることができ、またインスタグラムやYouTubeで逐次動画も配信されます。

こちらは、2020年のレースのダイジェスト動画です。

常人の想像を超えるレースですが、この冒険家たちの挑戦と奮闘を一度見始めるとゴールまで目を離すことができません。

困難を乗り越えていく姿や、たった一人で孤独な嵐の夜を耐える姿に勇気をもらい、水平線の向こうに沈む美しい夕日やイルカたちがヨットを並走する様子に感動をもらえるからです。

白石康次郎とは

そんな過酷でありながらも人々に感動を与えるヴァンデ・グローブには、日本人プロセーラー白石康次郎さんが参加しています。2016年のレースに初のアジア人として出場したものの約1か月後にマストが破損し、リタイヤ。

そして、2020年に再び出場。今度はなんとわずか6日目にメインセールが大破するというトラブルに見舞われましたが、船上でたった一人で1週間かけて修復。その後、航海を続け、94日21時間32分をかけて全33廷中16位で見事完走しました。

こちらで、2020年の白石さんのレースの様子が紹介されています。

完走の翌日、白石さんはレースを振り返って「奇跡の積み重ねといった感じでした。ゴールした時は、よくもってくれたと船に向かって言いました」と話しています。

ヴァンデ・グローブだけではなく、ヨットでいくつもの冒険をしてきた白石さん。ヨットで海を渡ることの魅力は、自分を見つめる時間が長いことだと言っていますが、その経験から出る言葉には重みがあります。

動き出さなければ何も始まりませんが、動けば、夢は向こうから近づいてきてくれるのです。

海に出れば、船が壊れそうな嵐や、まったく風の吹かない日があるのは当たり前で、どちらも避けることはできません。しかし、これまで収まらない嵐はなかったし、風の吹かない日もありませんでした。つらいときは、この言葉を思い出してください。

白石康次郎さんは、ヨットで冒険する姿を通して生き方を示してくれています。

偉大な冒険の場「ヴァンデ・グローブ」。次は2024年開催予定です。その挑戦を見守ってみてはいかがでしょうか。

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