植林は地球温暖化への1つの対抗策とされていますが、この植林には「ゴールデンルール」があるのをご存じでしょうか?

科学者たちは、この10年間にすべての国が最優先で取り組むべき「森林再生10のゴールデンルール」を提案しています。

森林破壊による生物多様性の損失、地球規模の気候変動、貧困など、相互に関連した脅威が深刻化していることから、森林が果たす緩和的な役割についての認識が高まり、世界各地で意欲的な植林プロジェクトも行われています。

しかし、植林は非常に複雑であり、不十分な計画で行うと、予期しない負の結果をもたらしかねません。

そこで今回は、学術誌「Global Change Biology」に掲載された研究レビューを取り上げ、大規模な植林における真実と森林再生10のゴールデンルールなどに関しご紹介します。

大規模な植林における真実

気候変動に対する緊急の解決策が求められている昨今、地球温暖化の要因の一つである人為的なCO2の排出量を一部補うために、膨大な量の炭素を蓄えることを目的とした植林活動がすでに行われています。

しかし、計画や実行が不十分な植林は、かえってCO2排出量を増加させ、生物多様性や景観、生活に長期的な悪影響を及ぼす可能性があり、植林の3つの重要な目的である、「炭素隔離」「生物多様性の回復」「持続可能な生活」を実現するには不十分であるという懸念が高まっているようです。

また、非現実的に高い目標設定は、予期しない負の結果をもたらすかもしれません。

潜在的な問題としては、特に非森林生態系の破壊による在来の生物多様性の移動、侵入種の増加、花粉媒介者(ほとんどはミツバチなどの昆虫)の減少、農地の減少とそれによる食糧生産の減少、水循環の破壊、地上部バイオマス(幹、枝、葉のバイオマスの総称)に貯蔵される炭素の減少、土壌有機炭素(SOC)の減少、北方地帯のアルベド(反射率)の低下による気温上昇などが挙げられます。

これらの問題は、多様で炭素の吸収量が多い在来樹種の混合を促す修復アプローチではなく、商業的なプランテーションに取って代わられてしまうことが多いのが現状です。

そのため研究者たちは、自然の森に似た森林再生を奨励し、炭素を回収するだけでなく、人々や環境、自然に複数の利益をもたらす点を重視しています。

それでは、最新の生態学的研究に基づいて、生活を向上させながら炭素吸収と生物多様性の回復の割合を最大化しつつ、森林生態系回復のための10のゴールデンルールをご紹介します。

植林10のゴールデンルール

このゴールデンルールは、森林再生プロジェクトの政策立案者、アドバイザー、実践者が、現在懸念されている大規模な植林活動の落とし穴の多くを回避するために設計されたガイダンスであり、「生態学的修復の実践のための国際原則と基準」に沿ったものです。

1.既存の森林を守る

損傷を受けていない古い森林は、炭素の吸収率が高く、火災や暴風雨、干ばつなどへの耐性も高いため、森林を現在の状態に保つことは常に望ましいことです。選択の余地がある場合は、森林破壊を止め、残存する森林を保護することが最優先となります。

2.地域住民を中心とした植樹プロジェクト

植林プロジェクトを成功させるためには、地元の人々の協力が不可欠であるという研究結果があります。将来的に森林を守ることで最も利益を得られるのは地元の人々であることが多いからです。

3.生物多様性の回復を最大化し、複数の目標を達成する

生物多様性を回復させることで、炭素の吸収、生態系サービス、社会経済的利益など、他の目的も達成できます。

4.森林再生に適した地域を選ぶ

以前は森林ではなかった土地や草原や湿地などを避け、既存の森林を連結または拡大し、他地域で森林破壊を引き起こすような活動を回避するようにします。

5.可能な限り自然の森林再生を利用する

土地や景観の条件が整っていれば、植樹よりも、木が自然に生えてくるのを待つ方が、コストが抑えられ効率も良い場合があります。

6.生物多様性を最大化できる適切な樹種を選ぶ

原生種を優先し、その地域で自然に見られる木の種を組み合わせて植え、相互作用を重視します。また、外来種は避けるようにします。

7.回復力のある適切な遺伝的変異性と産地を持つ種子や苗を選ぶ

人工林の存続と回復力を確保するためには、地元や地域の遺伝的バリエーションに合致した、適切なレベルの遺伝的多様性を持つ種子や苗を入手することが重要です。

8.事前に計画を立てる

植林を行うプロジェクトでは、適切なインフラと種子供給システムが不可欠です。種子の調達と苗の生産を自社で行うか、外注するか、あるいは外部のサプライヤーから植物材料を購入するかについては、少なくとも1年前に決定する必要があります。

9.実行して学ぶ

計画の決定は、科学的知識と先住民の知識の両方を組み合わせて行うべきです。

科学的根拠を得るためのフィールド実験が結果を得るまでに長い時間を要する場合、森林の近くに住む人々が何世代にもわたって獲得してきた伝統的知識は特に有効となります。

10.収益化する

生活林からの林産物を販売して収入を得ることは容易ですが、既存の原生林や復元された原生林からの環境サービスを販売することは、特に保護区では困難です。

しかし、森林復元の持続可能性は、森林復元から得られる収入源が代替の土地利用から得られる収入源を上回り、その収入が最貧層を含むすべての利害関係者に公平に分配されるかどうかにかかっています。

研究者たちは、気候や生物多様性の危機に対処し、生活のニーズを支えるための長期的な戦略の設計に重点を置いています。

また、固有の知識を持つ地域コミュニティの役割と生態系の機能を回復させて森林再生を成功に導き、そこから多様な森林製品の製造などで利益を得ることも重視しています。

世界各地での植林プロジェクト

森林は地球上の生命にとって不可欠なものです。世界の動植物の4分の3が生息し、二酸化炭素を吸収し、食料、燃料、医薬品を供給しています。

しかし、その数は急速に減少しており、デンマークと同じくらいの面積の原始的な熱帯林が毎年失われています。

失われつつある森林を補うため、世界各地で意欲的な植林プロジェクトが進められています。

例えば、アフリカ主導で行われている運動があります。気候危機と戦うために5,000マイル(約8,000km)の森の壁を植えようというものです。これは、グレートバリアリーフ(オーストラリア北東岸に広がる世界最大のサンゴ礁地帯)の3倍の大きさを持ち、地球上最大の生きた構造物になろうとしています。

まとめ

植林にシンプルで普遍的な方法はありませんが、効果的で長期的な炭素吸収源を提供し、生物多様性と人々の利益を最大化するためには、私たち一人ひとりが関心を持ち、植林プロジェクトなどに参加することに意義があります。

ただし、植林プロジェクトに参加しなくても、活動に寄付をしたり、身近で行われている森林保全活動に参加したりするなど、多方面から森林を守る方法はあります。

まずは、自然に関心を持ち、自然の大切さを感じ、意識の変革をすることが大切ではないでしょうか。

過ごしやすくなってきたこの時期、森に出かけ自然に触れることから始めてみませんか?

(参照URL)
Ten golden rules for reforestation to optimize carbon sequestration, biodiversity recovery and livelihood benefits │ Global Change Biology

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